ある合唱部のお話

こんにちは。営業部の牧です。

先週までは違うテーマで書こうと思っていたのですが、この連休でとてもよい刺激を受けたことがあったので、急遽変更することにしました。

また前回に引続き合唱ネタになってしまいますがお許し下さい。

合唱といっても、今回は私がふだん活動している合唱団ではなく、ある学校の合唱部のお話です。 一昨日の日曜日、都内にある某私立G学園合唱部の定期演奏会に行ってきました。

この学校は中高一貫の男子校で1,000人以上の生徒が通う進学校です。 これだけ男子がいるので、合唱部もそれなりに人数がいるのかと思いきや、今年は全員で9人(高校生7人、中学生2人)でした。 男声合唱は、基本トップテノール・セカンドテノール・バリトン・バスの4パートに分かれて歌うので、部員数的にはまさに風前の灯です。合唱というよりカルテット(四重唱)、下手すると同じパートを一緒に歌う人がいないなんてことになってしまいます。

この合唱部の演奏を聴くのは今年で6年目になりますが、毎年10人前後をいったりきたりで、最上級生が卒業で抜けるたび来年は大丈夫かなといつも心配になってしまいます。 そんな中で今年の演奏会を聴きました。せめて20人前後メンバーがいれば、音楽の授業でクラス合唱したときのように、色々な声が溶け合って合唱だなって感じに聴こえますが、なにせ各パート一人か二人、個人の声が聞き分けられてしまいます。 歌う側にとってこれがどれだけ大変なことか。

違うフレーズを歌っている隣のパートにつられてしまっても、頼れる同じパートの人がいません。ブレスが辛くなったときに一息入れ直すこともできないし、間違ってずれたらおしまいです。中高生の年代は、声変わりしてから日が浅いので声も安定していません。

そんな中、よい声が出て、リズムもしっかり歌えるメンバーばかりではないので、ヒヤヒヤしながら聴くのが例年でした。 ただ今年の彼らはちょっと違いました。

始まりからずっと高校生の学生指揮者が指揮していて、例年なら大半の曲を指揮するはずの顧問の先生が最後のOB合同ステージなど一部しか出てこなかったのです。

演奏を聴いていて、明らかに練習量が違うなと判りました。約20曲、全曲楽譜を持たず暗譜で歌いましたが、不安そうな様子も感じられず、自分たちの歌を聴いてほしいというアピールというか自信のようなものを感じました。

去年までほとんど声が聞こえなかった中3の生徒が、難しいフレーズのセカンドテノールで和音をしっかり決めていましたし、トップテノールの高3の生徒は、きつい高音域を息切れすることなく保ち、乱れず歌い切っていました。また昨年までトップテノールだった高校生が、変声やパートバランスのこともあるのでしょうが、真逆のバスにパート異動していましたが、ベースのリズムをしっかり刻み、低い音で支えていました。
G学園の合唱部は、かつては50人以上の部員を抱え全国大会にも出場するような強豪校だったそうです。数百人からのOBがいるとのことで、合唱部の伝統の灯を消さないようにと、毎年現役よりも多い人数のOBが合同ステージで賛助出演しています。 これまでの演奏会では、そんな先輩方に気後れしてか、個々の力量の違いからか、現役生はOBの大人を頼ってしまっている印象が否めませんでした。
でも今年は、明らかに現役が主役でした。OBは合唱曲を合唱らしくするためのお手伝いに加わっているという印象です。 終演後に聞いたことですが、今年は長年ずっと指導してこられた顧問の声楽の先生が体調不良でほとんど練習に来ることができなかったそうです。そしてOB会を永く中心になって取りまとめてきた方が、今年初めに亡くなったとのことでした。 影響力のある人が今年は関われなかったことが、逆に禍転じて福となったのかもしれません。

ただそれができたのは間違いなく生徒達の意識の変化だと思います。 メンバーは去年とたいしてかわらないのに、これまでの年と何が違うのか。とても興味を持ちました。 部員の一部と少し交流があったので、前々から聞いていた合唱部の悩みは、部活動や委員会活動を他にも掛け持ちしていたり、放課後の進学塾などがあって、なかなかメンバーが揃って練習できない。パートが欠けることも多いというものでした。音楽や歌うことは好きだけど、合唱部への参加は優先順位の下の方だった生徒も多かったのではないでしょうか。

しかし今年はどうやら違ったらしい。それがどうしたら君達はそんなにやる気が出てまとまれたの?と聞きたいです。

部活動をリードするのは、最上級生の高3と実質活動の中心になる高2です。 6年間この合唱部の演奏に接してきたので、今回卒団となった高3生はちょうど中1の時から見てきたことになります。(みな入学当初は声変わりもしていないいわゆるボーイソプラノでした。)

すっかり体格もよくなって貫禄のついた高3の彼らですが、ホンワカおっとりした感じで決して自分からグイグイといくタイプにはみえません。昨年までは合唱経験が他のメンバーよりも豊富な割に頼りないなと感じていました。

ところが最上級生になった今年の姿は見違えて、リーダーや指揮者というポジションをしっかりやり遂げて演奏全体をリードしていました。

立場が人を変えるってことをよく耳にしますが、まさにそういうことでしょうか。

きっと癒し系のキャラクターはそのままに明るく行動でリードしてきたのかなと思います。

また個人の実力が伴わなければよい演奏はできません。途中参加や中途退部が多い中で、腐ることなく中1から六年間続けてきた積重ねが地力となって今回のよい演奏に結びついたということだと思います。最後に身を結んで本当に良かった。 拙い文章力でうまく表現できないのがもどかしいですが、組織での活動が盛り上がるには一人だけが頑張っても上手くいくものではなく、皆がやる気になる雰囲気をいかに作りだせるかだと思うのです。きっとそんな彼らの人柄が、やる気まんまんの高2生以下とうまく噛み合って充実した練習を牽引することができたのではないかと思っています。 いま高2のメンバーが一人、私がいる合唱団の12月にある定期演奏会にワンステージメンバー(新人勧誘の一貫で募集している特別メンバー)として練習に来ているので、次に会ったら、今年いったい何があったのかを聞いてみたいと思います。 最後にもう一つ感動的な場面がありました。

演奏会のラスト、アンコールと終演後のロビー演奏で、昨年中1から5年間続けながら途中退部してしまった元部員を同期の高3がステージに呼んで一緒に歌う場面がありました。 事前に聞いていたはなしだと、最上級生として最も負担の大きい最終学年をともにせず途中抜けしてしまったことについて、わだかまりもあったはずですが、そんなことは感じさせない対応に彼らの人柄が滲み出ているように感じて暖かい気持ちになりました。 そんな彼らの活動をこれからも1ファンとして応援していきたいと思います。

以上、若い人の部活動っていいなというお話でした。

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